毎度。俺です。
先々週末のニセコ旅行のお話がまだまだ済んでいません。いよいよ本稿が今回のニセコ旅のクライマックスになります。ちょっと長いですがおつきあいください。
正直なところ写真を撮影する精神的余裕がまったくありませんでしたので今回は画が足りないです。今回使った写真は同行の友人Sに「この日撮った写真を洗いざらいクレ」と頼んで送ってもらったものです(笑)。
さて。ニセコ二日目のこの日はよく晴れました。羊蹄山の雄大な姿がすっかり丸見えです。
「これなら今日はゲートが開くぞ!」
前日午後から降雪がなく、この日のニセコなだれ情報を見ても雪はだいぶ安定しているようです。ちょうどよいゲート外デビュー日和のようです。
さっそくリフトに飛び乗り、と言いたいところですが、朝わりとのんびりして、のそのそとセンターフォー、キング第3と乗り継いで上を目指すと、すでにG4ゲートがオープンしていました。
G3ゲートはハイクアップして山頂を目指すゲート、G4ゲートは藤原の沢、さらに横へトラバース(横断)して東尾根を目指すゲートです。山頂まで登った人たちの苦労を尊重するためかどうかは知りませんが、G4ゲートはG3ゲートより1時間遅れて開くことになっているようです。せっかく苦労して登ったのに下から横入りしてきた人たちにパウダーが食い荒らされていたのでは業腹ですものね……。
① G3ゲートからハイクアップで山頂を目指す人々
② ①の人々の目的地(よく見ると人がうじゃうじゃいる)
③ このあたりにG4ゲートがある
④ G4ゲートを出て延々トラバースしている人(私たちがとったコース)
私たちはG3からの山頂ハイクではなくG4ゲートからゲートインすることにしました。前日の午前中に降って以降ほぼ降雪がないので、ふわふわ感はあまりない、やや締まった新雪です。それでもストックを突けば先端がズボズボと数十センチも潜ります。さてどうなりますか。
……ゲートを通った瞬間怖いです。
ガイド役の友人Sはゲートを出るとなんにもないほうに向かってどんどんトラバースしていきます。ゲートを入ってすぐの斜面はあらかた新雪を食われ尽くしているので、できるだけ新しい雪のある奥を目指すのですが、心の中では「えーまだ奥いくの? もう戻ろうよ……降りようよ……」という心境。テレビ番組『はじめてのおつかい』で不安で心細くて今にも泣き出しそうになりながらお兄ちゃんについていく弟のような気持ちでした。
文明社会が遠くなっていくにしたがって緊張感は高まり、トラバースの間じゅう体中の筋肉をカチコチにさせていたため、さあ斜面にドロップインしようという頃にはもう、膝がプルプルするほど体力が終わっていました。眼下に広がる雄大な景色もむしろ恐怖を助長します。
山頂部の大雪原を下り、林を抜けて花園第3リフト乗り場あたりでコース復帰、というルートだったと思いますが、無我夢中でよく覚えていません。いつもは楽しいフワフワの新雪も、私が文明社会に戻る体力を削ろうとする障壁としか思えませんでした。コース内に戻ってきたときは心底ホッとしました。遭難せずに帰ってこれた……。
自分でもビビリすぎとは思いますが、自然をみくびってナメてかかるよりずっとマシだと思っています。何かあったらスキー場のせいだとか、何かあったら誰かが助けてくれる、といった甘ったれた気持ちで山に踏み入っては絶対にいけないと自分で自分に言い聞かせておりましたが、その一方で本当に何かあったらどうせ自分ひとりでは何もできやしないのだということもわかっていました。なので、ビビらなきゃいけない時はちゃんとビビっておいてよかったのだ、ビビるべきなのだと思っています。
この日はG7ゲート(ええ沢ゲート)からもコース外に出てみました。こちらは斜度も緩く、滑走痕も多数あってG4ゲートを出た時ほどの強い不安は覚えませんでしたが、途中で同行のS夫妻とはぐれて広い森の中でたったひとりになった瞬間はやはりちょっと怖かったですね。
しかしその時はそれと同時に、「俺は今、冒険をしている!」という興奮もありました。文明社会からはほんの数十メートルなんですけどね。文字通り森閑とした森の中でたまたま出くわした小さな広場の真ん中にたった独りで佇んだとき、なんとも名状しがたい感動に襲われました。360度見回しても人間は自分だけ。文明を思わせるものは何もない。なにこの大自然。
しかしええ沢はどうやら人通りの多いところで、ほかの滑走者とも遭遇するので(=ごくたまに樹々の彼方に人影が垣間見える時がある、という程度ですが)、落ち着いてルートを探しながらコース復帰できました。
コース外は本当に何から何まで自然のままで、当然のことながら「スキーヤーが快適に移動するための配慮」がいっさいありません。間違ったほうへ進めば引き返したり登り返したり、それがイヤなら60~70°はありそうな絶壁を飛び降りなければいけなかったりします。ええ、飛び降りましたとも……(横向きに、ですけどね)。
つまり油断すると簡単に進退きわまります。ボーッと滑っていれば自動的にリフト乗り場に着く、というようにはできていないということです。それは裏を返せば、その気になればコース内では到底望み得ないような地形や条件をいろいろ楽しめるということでもありますね。
ニセコのコース外滑走は、整地され管理されたゲレンデとはまるで別世界、というか別種のスポーツでした。それはとてもエキサイティングだということはよくわかりました。しかしかなり体力を消耗するし、深雪・不整地を滑走する技術もある程度は必要です。そしてファットスキーはほぼ必須と言ってよいでしょう。少なくとも、初心者・初級者がオンピステ用のスキーを履いて気軽に楽しめるような場所ではないでしょう。
ゲートは14時過ぎには閉まってしまうし、大自然に圧倒されて萎縮モードの私は「もうゲート外はお腹いっぱい」という気分になっていたので、夕方からはニセコのこれまた素晴らしい整地を力いっぱい滑り倒すことにしました。またまたナイター時間まで足腰立たなくなるまで滑ってニセコ二日目も終了~。